蒼闇、月は緩い。  3       












割った唇の隙間から、男の大人の舌が、慣れた動きと狎れた強さで、さらに執拗に攻め込んでくる。エドワードが抵抗できないほどに。
「あ・・ぅ・・や・・っ…!」
強引に侵入させた舌先で、何度も何度もエドワードの歯列をなぞり、咥内を舐め回した。
猛禽に、獲物として餌として捕獲された小動物のように、がっちりと顎を捉えられたエドワードには、為す術が無かった。食物連鎖にも似たこの上に立つのは、自分を国家錬金術師として見い出した国軍大佐のロイ=マスタング。軍属としての上官。自分の後見人でもある彼。
彼とのいままで関係は、よくも無く悪くもない関係だった筈だ。ある程度の信頼はあった。
それが。そんな。理不尽な。エドワードの世界は急転直下した。
自分はこういうことをされる為に、今までこの男の傍におかれていたのだろうか?
軍に属する身でも、子どもだからと周りが優しくしてくれる、時にはそんなことに苛立った時期もあったが、すべてはこのために黙認されていたのだろうか。
『誰も君を選ばない』と、囁かれたその言葉は、男だけでなく、男の部下への不信感さえも次々と滲み出してきた。本当にドアの向こうの彼らはこの状況に気付いていないのだろうか。それとも気付いていても見て見ぬふりをいるのかもしれない。
あの厳しくて優しくてきれいな中尉が。兄貴のような少尉たちが。
小さな体ががくがくと震え、この暑いのに冷汗も出てくる。
エドワードは涙を流してただ震えて耐えていた。それでも体が身を守ろうとする本能なのか、男から逃げようと体が自然と反り返る。
「・・・動くな」
一瞬口を放し、ちっ、と舌打ちして、鋭い口調でロイは言いこめた。また唇が重なり、エドワードは男の体の重みで弄されるのみ。人形のようになりながらも、時折僅かに顔を動かして、男の舌から何とか逃れようとする少年を、いとも簡単に押さえ込み、薄赤色の舌を強引に絡め取りった。
唾液を吸い、そして自分の唾液を何度も飲み込ませ、口の角度を何度も変えて咥内を己がままに弄んだ。
涙を流す少年に一層残酷な欲情をしながらも、ロイの頭の片隅は冷静だった。
男は思っていた。何故だろう、不思議なことに、この少年からは一片の唾液臭すらしないではないか。自分が蹂躙している少年の歯茎は健康で綺麗な桃色をしている。この少年はすべて透明で、きらめくような早朝の露のように男には思えた。そして、このきらめきを泥水のように穢したい、と。
ようやくロイが唇を放した時は、エドワードは、口端から首筋にかけて涙と男の唾液と自分の唾液で、べとべとになっていた。有無を言わさず、飲み込まされた男の唾液の残り滴が、半開きの口端から長く垂れ、糸を引いて絨毯にぽたりと落ちた。
「えっ、うっ、えっく・・・」
小さな嗚咽を絞り出す少年に、ロイは同情や哀れみはまるで感じなかった。
床にへたり込んだまま、エドワードはもう動けなかった。
ただ、痴呆のように涙と嗚咽の合間に、小さく空ろに懇願を繰り返すだけだ。
「や・・・だ・・・やめ・・・て・・・」
それでもロイは、その願いを聞き入れてやる気など毛頭ないのだ。
いきなり降りかかった大人の男の圧倒的な強さ。エドワードはロイにはもう恐怖心しか感じなかった。
次は何をされるのか。ただもう怖くて。何も信じられなくて。




普段小生意気なエドワードが怯える姿は、ロイの残酷な淫欲をいっそう煽り立てた。
この無力になったこどもをどうしてやろうかと。まずは軍靴でかれの陰茎をにじり、嬲ってみようか。尻を蹴ってみようか。それとも金髪を掴んで引き摺ってみようか。
男は涙を流す少年を見詰めている。何を考えているのか。
黙って自分を見ているロイと、小さな嗚咽を上げるエドワードとの間に、数十秒ほどの時があった。何もしないでいるロイにエドワードはいっそうの恐れを抱いた。
すると、ロイは手を伸ばし、エドワードの黒いタンクトップをズボンから引っ張り抜くと、裾を捲り上げた。そして頭と片腕を抜きとると、それを使ってかれの鋼のほうの手を、執務机の脚に縛り付けたのだ。
「・・・!やっ、嫌、やめ・っ...!」
エドワードは縛り付けられる恐怖に顔色を変えた。
人間が一番怖いと思うのは、手を縛り上げられることだ。これはその人間の従属化と物体化とを示すからだ。
しかし、エドワードがなんと言おうと、いまさらやめる気は毛頭無い。片手を押さえ込んでしまえばそれでいい。これなら彼は錬金術を使えないから。抵抗はできるまい。
それでもまだ抵抗する気ならば、生身のもう片方の手など折ってしまっても構わないとすらロイは思っていた。



私の金色人形。



ロイは満足と加虐心が、一気に加速する昂揚感を感じていた。体内の血液が湧き上がった。
疼くような感触が一気に上がった。中心が熱い。そうだ、私は、この高まりを燃やさなければいけなかったのだ。

ずっと感じていた、あの体の奥底から湧き上がって来る苛立ちはこれだったのか。
苛立ちの正体を知ったロイは、ありとあらゆる感覚を、感情を、この獲物の少年に与えたかった。
痛みも、苦しみも、悲しみも、絶望も、そしてなにより快感を。

ロイはエドワードの三つ編みの髪紐を解いた。長い金髪が顔に張り付きながらも、さらりと流れ、広がった。
「きれいだ。金の糸だ」
ロイはそう言いながら何度も髪を指で梳く。己の所有物のように。
だが、いきなり上半身を裸にされ、手を縛られて自由を失ったエドワードには、ロイが自分の髪を指で触れることすら怯えていた。裸にされた羞恥とともに、男の指が動く度に、怯えでからだがびくびくと震えた。
普段は力強い筈の金色の眸は、涙で潤んでいて。
やがて、ロイはエドワードの背中に手を回すと、もう片方の手で彼の胸の突起に触れた。
「・・・あっ?」
エドワードが小さな声を上げる。ロイは大人の指先で、桜色の突起をきゅっと強くつまんだ。エドワードが小さな悲鳴とともに背中を反らす。
「ぅ・・痛・・い・・や・め」
軍人の指先で、何度も捻り上げられる乳首の痛みに、エドワードは声を漏らした。涙で潤んだ目に、男の白い手袋が間近に見える。手袋の錬成陣の中心に描かれた火蜥蜴がうねるかのように見えた。
それでも。ロイは強弱を付けながら掌で突起を転がしはじめた。そして唇は咥内を蹂躙し続けている。
そのうちに、ロイは身を捩るエドワードを片手で支えながら、唇を放すと、今度は黒髪を揺らして突起に唇を近づけた。
「!・・や・・あ、やめろッ」
唇を近付けて、舌を這わせて胸の突起を口内で転がす。柔らかかったエドワードの突起は次第に固さを増してきて、ぴいんと固く盛り上がった。桜色の乳輪もぷっくらと充血している。
執拗に繰り返される行為に、エドワードは次第に頭が熱くなってきた。
もとより、猛暑の東部、空調のあまり効かない司令官室でされているのだ。はじめはその所為だと感じていたが、エドワードは体の中心が、自分の意思に反して、変化を遂げてきたのを感じてきた。
「・・・あ・・っ」
涙を流しながら自分の感覚に嫌悪し、身を捩る少年。ロイはにやりと口元をゆがめると、錬成陣の手袋を口で外した。そして、今度はエドワードのズボンの上から、かれのそこにその掌を置いた。
大きな掌で殊更優しく、エドワードの男根を布越しに撫でる。何度も何度も円を描くようにして。それからロイは少しばかりちからを加えてリズミカルに刺激し始めた。
掌の中で、布の越しにエドワードのそれが変化をしていく有様が、はっきりと伝わってきて、それはロイの心を大きく躍らせた。ロイは夢中になっていた。
この初めてのはずの少年が、無知のはずの少年が、無知という罪への償いの替わりに見せる痴態が、思いの他、淫靡で、美しかったからだ。13歳とは思えぬ匂い立つ色香に、ロイは我を忘れそうになった。
「どうだ、鋼の。感じるだろう、熱いだろう。君のここは私の手によって気持ち良いと感じているのだよ。どうだ、どんな気分だい?」
意地悪く、皮肉気に微笑みながら、ロイはエドワードの羞恥を誘う。
「…っ、こん・・・な・・・の、いや・・ッ」
エドワードはとぎれとぎれにやっと答える。
「…自分でしたことは無いのかね?」
「・・・・・・・・?」
さらにロイは続ける。
「君の年齢だったら変化があってもよい年頃だろうが。一度位は手淫をしたことくらいあるのだろう?」
「・・・な・・・に・・? 知・・ら・・」
「そのときはどうだった?今、やってみなさい」
「嫌!嫌だ、出来ない、見せるもんじゃない!アンタ、変態なんだ・・・ッ」
恐怖と羞恥に泣きながらも、変態と毒つ付くエドワードに対してロイは頭に血が上った。
『変態』という言葉にロイは、思わずエドワードの顔に平手打ちをくわえていた。ばしっ!という音と共に、エドワードの小さな顔が大きく横に反りかえり、片手を縛られている為に、かれは上半身を捻らせながら床に転がった。
「・・・ッ!」
打たれた頬が赤くなっている。
「そんな大声をあげるものではない。誰かが来たとして、そして誰も君を選ばないとしてと、君が恥をかくのには何ら変わらないだろう?こんな姿を見られたくないのだろう?」
ロイはゆっくりとそう言いながら、エドワードのスボンの前をくつろがせると、下着をおろした。
わずかに勃起していたエドワードのそれがロイの手によって引き出された。
まだ小さいながらも、変化を遂げていることに、ロイは喜びを感じた。この変化は私の手によるものだ。彼は私の支配下にあるのだ。
そしてロイはエドワードの亀頭の先を優しく数回撫でると、次は陰茎を握って扱き始めた。
「えっ、えっ・・・・あ、ふ・・・嫌・・ぁ」
エドワードがロイの手から感じる感覚は、嫌悪から次第に感覚が変わっていった。先端からは液体が滲み出していて、くちゅくちゅと音を立てながらロイとエドワードの肌を滑る。
「ふん、くちゅくちゅといやらしい淫音がする。きみは淫らな素質のある躯なのかな?」
嘲笑うロイの揶揄にも、何も答えられなくて。明らかに次第に頭の中の神経が一点に集まるようで。白いものが広がっていくようで。なにかが出るようで。はじけるようで。なにかを出したくて出したくて、でも出したくなくて。それでも出したくて。
エドワードは葛藤して悶え苦しんでいた。
「やっ、や、あ・・変・・・やめて・・やめて」
次第に集まり達する熱に、とうとう我慢しきれなくなったエドワードは、意思とは裏腹に精を一気に吐き出した。エドワードの幼い性器からは、自分の腹に白濁色のどろりとした、独特の青臭さをもった体液が飛び出してきたのだ。
少年の白い精は勢いよくほとばしった。
「・・・はぁ、はぁ」
荒い息を押さえ気味に吐いて、エドワードは自分への罪悪感と惨めな開放感に身を漬して涙を流していた。
「よし、いい子だ」
エドワードの腹には自分の吐精がどろりと溜まって。流れていて。どうしようもなく惨めだった。そして。ロイはエドワードを床に横たえると、大きく膝を割り、まだ吐き出したばかりの股間に顔を埋めた。
「ああ!」
泣きながらも耐えて大人しくしていたさすがのエドワードも、はじめての口淫には驚いてしまって。自分の性器を咥えこまれるなんて想像もつかなかったからだ。しかもそれをする相手は自分の上官のロ=マスタングなのだ。
彼にこんな性癖があるとは思わなかったから。ただ、手厳しい事を言うことはあってっも、自分への信頼と、大人としての情愛があると、ついさっきまで、この東方司令部に来るまでは、かれを信じていたから。
でも。いやだ。いやだ。やめて。やめて。 心の中でエドワードは必死で叫んでいた。
しかし、男のさらさらとした黒い前髪が、精を吐き出したばかりの陰茎に触れて、この状況なのに何故かくすぐったいとさえ思った。
「お楽しみはこれからだ。聡明な君なら分かるだろう。部下の軍属なら上官の私のしたいことが」
脅迫めいた言葉でエドワードを黙らせてしまうと、今度はズボンを膝まで降ろしにかかった。そして少年の尻の下に彼の黒い上着を敷いた。
「? なに・・・!もう、やめてょ、たい・・さ・・ゆるしてぇ・・」
「ここまで来て、全部済まさずにすみとおもっているのかね?これからが本番で、君の後ろをよくして、あげようというのに」

「・・・・意味がわかるかい?そう、ここに」
ロイは指先でエドの秘所を撫でると、青い軍服の前を寛げ、屹立した己自身をとりだした。
おとこのそれ、おとなのそれ。
エドワードの目には、それはこの上なく大きく凶悪な肉棒で、これが自分の中に入ってくるのだということを確信させ、それに伴う痛み、いいあらわしようの無い恐怖を少年に与えたのだった。
「さあ」
ロイはゆっくりとエドワードの膝をさらに割った。



続く

05 11/12UP    変態佐。えろへたでごめんなさい。(号泣)




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