めいふらわーさんのサイトで踏んだBBS2222のリクを書いて頂きました!!





cherry blossoms

「うー、さっぶいなー。暖房入れようぜ?大佐」
東方司令部を久しぶりに訪れたエドワードだったが、ロイの執務室に入るなりそう言っ
て腕をさすった。
「ああ、今日は冷え込むね。あいにく暖房はもう使っていないんだよ」
ここ数日暖かい日が続いていたため、今シーズンの暖房はもうストップしているらし
い。
ソファに腰掛け、猫を思わせるしぐさでふるりと身を震わせるエドワード。
「これでも着ていたまえ」
ロイはコート掛けから自分のコートをとると、エドワードの肩にかけた。
「…ありがと。じゃ、これ。今回の報告書」
手に持っていた紙の束を差し出す。その様子はそっけないが、わずかに頬が赤い。
「確かに受け取った。…さて、鋼の」
ロイは受け取った書類を机の上の書類の山に加えて。
ふいに呼ばれ、ちょっと戸惑うエドワード。
「ん?なに?」
「今回はいつまで居られる?」
ペン先に滲んだインクを拭き取り、机の上に置く。
「んー…。実は明日発つ予定」
すまなそうに。
ロイは一言。そうか、と言った。
その声の調子がなんとも寂しそうで気が咎めるが、仕方の無いことだ、と自分に言い
聞かせるエドワード。
「ああ、そうだ」
何を思いついたのか。
ロイは席から立ち上がってソファの方、つまりエドワードのほうへ歩いてきた。
エドワードはその顔を見上げる。
「ちょっと付き合いたまえ」
手招きしつつ、ドアの外へ。エドワードもロイに倣った。
なにやら楽しそうに鼻歌などが聞こえる。
「おい、大佐?どこ行くんだよっ」
歩幅の差でやや小走りになりつつロイについていく。
ロイのコートを羽織っているせいだろうか。わずかに足を捕られてもつれるような感覚
があり、ときおりバランスを崩しかけた。
それに気づいたロイは歩調を緩め、エドワードに合わせた。
「大佐、仕事はどうしたんだよ。中尉に怒られてもしらねぇぞ?」
「今日までの仕事はもうほとんど終わった。問題は無い」
そう言ってのける。歩く速度は変わらない。
目的地があるのだろう。迷い無く道を選んでゆく。
「大佐ぁ。そろそろ教えろよ。どこ行くんだ?」
焦れて問い詰めるエドワード。
くすっ、と笑うロイ。
「外だよ。裏庭だ」
「何があるんだ?」
怪訝そうな顔で尋ねる。
「何も無いよ。今はね」
なにやら意味ありげな言葉。
悪戯を思いついた子供のよう。
楽しそうで、見ている方も楽しくなる。そんな顔だった。
しばらくして、ロイが突然足を止めた。
一枚も葉のついていない木々。冷たい空気に頬がわずかに痛む。
人通りなどまるで無い場所だった。掃除をされた形跡も無い足元の枯葉がいっそう景
色を寂れたものに見せているようだ。
それでも木々の枝の先端を見れば芽は膨らみ、春の訪れを今か今かと待ちわびてい
るようだったが。
「なぁ、鋼の?」
「うん?」
ロイのほうを振り返って。
「十日ほどで戻って来れないかな?」
伺うような、ロイらしくない気弱そうな視線。
「え?十日?ずいぶんと短いな。…まぁ、可能ッちゃ、可能だけどな。戻ってくるかどう
かはそのとき次第だな」
渋面で言うエドワード。本当は戻るつもりなのだが素直に言うのもなんとなく気恥ずか
しくて。
ロイも慣れたもので、エドワードのそんな反応もわかっていたから。
「戻って来い。待っている」
そう命令した。
「命令か?」
にやりと笑うエドワード。
「ああ。命令だ、鋼の錬金術師。十日後、私の元に出頭すること。いいな?」
真面目そうな口調で。しかしその漆黒の瞳は明らかに笑っていた。
「了解した。マスタング大佐殿」
冗談めかせて敬礼。
その様子が可笑しかったのか。ロイはくすりと小さく笑った。






約束の十日はすぐに過ぎた。
毎日忙しく仕事に追われていたロイにとっても、旅の空の下研究を続けるエドワードに
とっても。
約束の十日目。再び司令部を訪れたエドワード。
たった十日なのに、街の景色は少しずつ、日々変化しているらしい。
街路樹の枝先にもちらほらと若葉が芽吹いているのが見て取れた。
元気になれるような気がして。上機嫌で執務室の扉の前までたどり着いた。
深呼吸をひとつ。
呼吸と気分を落ち着けて、扉をノック。
なかから入室を促す声。
会ったら最初にいつものように気軽に、声をかけよう。
努めてその口の端に小生意気な笑みをのせて。
ドアノブを握り、ドアを開ける。
「よっ。大佐。来てやったぜ」
相変わらずその机の上は大量の書類に埋め尽くされていた。
「なんだよ、せっかく来たってのに」
「誤解だ。これは処理済の書類だよ。ほら、これが最後の一枚だ」
そう言って、その紙の山の上に一枚の書類を加える。
「め、めっずらし〜!雨でも降るんじゃねぇ?」
窓の外の晴天を眺め、そう言った。
「失礼だな、鋼の」
「だって。アンタが日の高いうちに仕事を終えてるなんて初めてな気がするし」
言い返せず押し黙るロイ。苦々しい顔をしている。
「…まあいい。ついてきたまえ」
そう言って席を立つロイ。まるで十日前の繰り返しのようで。
「どこ行くんだ?」
「外だよ。裏庭だ」
デジャヴュのようだった。
おそらくは意図したものだろう。十日前の会話をなぞるように。
目的はわからないが、ロイがあまりに楽しそうに笑うので、その言葉遊びに付き合う。
「何があるんだ?」
エドワードの言葉に、満足げにうなずくロイ。
しかし返された言葉は十日前とは違った。
「いいもの、だよ。秘密だぞ?」
そう言って、エドワードの背を押し、執務室をあとにする。
途中で中尉に会い、ロイはリザに書類が出来上がっていることを告げた。
「お疲れ様でした大佐」
優秀な副官である彼女はそう言うと、満足そうに笑った。
いつもこうだといいのですが、と一言添えるのも忘れてはいなかったが。
建物の外に出ると、空がまぶしく感じた。
目を細め、慣れるのを待つ。
「エドワード。そのまま目を閉じていてくれないか?」
導くように手をとって。
「ぁあ?何なんだよ?」
「君を驚かせたいんだ」
素直に白状するロイ。
正直に答えてその答えに納得したならば少年が従ってくれるということを知っていた
から。
このときもエドワードはロイの企みを容認するようにため息をつくと、おとなしく従ってロ
イに手を引かれるまま歩いた。
「さあ、ついた。ああそうだ。目を開ける前にちょっと顔を上向けて」
ロイの注文どおり、わずかに上を向く。
閉じたまぶた越しにも、空の明るさを感じた。
そのまぶたや頬に時折触れるやわらかい感触。
温度はない。ちょっとひやりとする。
「目、開けていい?」
ロイはただ一言、いいよ、と言った。
春の匂いのする空気を胸いっぱいに吸い込んで。
エドワードはゆっくりとまぶたを開ける。














まず目に入ったのは。













薄紅色の吹雪。





まぶしい光の中、ほのかな赤みがさす柔らかなものが舞っていた。
それは儚く。はらはらと散る。
少年は目の前に広がる光景に言葉を失くし。
圧倒される様な、一面の、満開の、花。
脇に植えられたコブシの花の白が薄紅を引き立てる。
見れば他の木々も見事に花を付け、競うように咲き誇っていた。











それは絢爛の春。








芽吹きの季節。







あっという間に過ぎて終わってしまうだろう、一時の、夢のような光景。
少年はつぶやいた。





「きれい、だな」







傍らに立つ男もつぶやくように。
「ああ。これが見せたかったんだ」




少年と男は、しばしその場に佇み、ただ静かに花の散りゆく様を眺めていた。











ふわり、ふわり。


それは踊るように。


それは風を纏って。


それはかろやかに舞い散る。



















Bbsでの2222番リク。

す、すいません。オチもなにもありゃしません。 
書き直しも致します。 
ダメ出しよろしくお願いしますっ…。 



★と、とんでもございません。リクを書いて頂いたうえに持ち帰り許可を頂きまして!
         感謝です!ありがとうございました!   BY夏沢管理人



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